「パブリッシャーは自分たちの知識を漏らしてしまっているのです」とペイトン氏

25 Jun 2015 | By Yukiko Koizumi

ジョン・ペイトン氏が語るインターネットには収益の大部分を吸い上げている「ブラックホール」があるということを認識してもなんの称賛もありません。

6月末にそのポジションを手放した、デジタル・ファースト・メディアのチーフエグゼクティブは、今週開催されたオスロに本社を置くビッグデータカンパニーであるシーセンスのパブリッシャーとカスタマー事例イベントのオープニング基調講演を務めました。

グーグルについて;彼らはモバイル広告市場70%を握っています。それがこの業界のすべてです。とペイトン氏は語ります。Facebookが発表した”Instant Articles”とアップルのNewsアプリケーションに関するニュースでは、両社はパブリッシャーに変わってコンテンツを配信する手段を模索しています。これらはパブリッシャーの味方でしょうか?敵でしょうか?

ペイトン氏は「私が働いているのは、変革を嫌う体質の業界です。我々の業界にソリューションを提供しているどなたかに聞いてみればわかることです」

20年近くインターネットを使用しているにも関わらず、出版業界はトレンドを取り入れることに対して遅れがちです。このことは出版業界の収益低下に直結しています。「このことは収益が上がらないという危機を招きます。常に新しい収益の源泉を見つけようとしなければなりません。新しいスキルも必要ですし、新しい人材も必要です」とペイトン氏。

別の課題にはパブリッシャーが「自分たちの顧客について何一つ知らない」ということが挙げられます。

「わずかに知り得ることは、自分たちの情報がタダで抜かれているということです」

彼は次のように語ります。「現時点で、我々パブリッシャーの顧客に対する知見は相対的に0です。旧来のビジネスの知見では、今の我々が必要としているレベルのデータを想定していませんでした。私達はこの想定を考え直さなければなりません。なぜなら私達はあぶく銭のためにこれらを散財してしまっているからです」

「Facebookは壁に囲まれた楽園を構築し、私達は彼らに我々のデータを提供し続けています」

ペイトン氏のカナダ人らしい現在の出版業界のまとめは、以下の様なものでした。「『旧来のメディアは、今儲けられる場所に群がっている、これからなにが儲かるかではなく』ウェイン・グレツキー(注:カナダの元プロアイスホッケー選手)の有名な名言と同じように。関連し続けたいと願うパブリッシャーにとっては、時間が勝負なのです。『なにかが頭から一晩中離れなかったら、それは始める時が来た証拠です。私達にはそれを得るための充分な時間はないかもしれませんが、動き続け成長し続けることは出来るのですから』」

ジョン・ペイトン氏の5つのメディア業界への提言

-恐れることをやめよう

– 多数の読者は、大きな売上のポテンシャルを秘めていることを理解しよう

-データを他に漏らさない。データ戦略を今すぐ練り始めよう

– 自分たちのデータのコントロールを取り戻そう

-独りでは出来ないかもしれないことを理解しよう。データ戦略のための正しいパートナーを選ぼう

 

他の講演者でサウスチャイナモーニングポストのエルセイ・チャン氏は、紙媒体においては「香港で有名」だったポジションからオンラインにおいて「世界で有名」になるための課題について話しました。サウスチャイナモーニングポストは、エドワード・スノーデンの記事が世界中で爆発的にブレークするまでは、東南アジアの地方紙と考えられてきました。ウェブサイトの刷新と時を同じくしたことや、英語の記事であったこともありPVは爆発的に伸びました。

「私達は香港の信頼できる情報ソースとして知れ渡りました。インターネットを利用して、私達はグローバルの購読者を惹きつける記事を掲載することを決意したのです」

世界中から注目を浴びる機会を得たことで、世界から見た香港と中国の位置を自覚しました。「世界の中国に対する関心は大きくなっています。我々の英語サイトに対する関心は、他の香港のメディアよりも大きくなっています」

「なぜなら、中国で本当は何が起こっているかを世界中の人々が知りたがっているからです。僅かな期間で、サウスチャイナモーニングポストの登録者数は3倍に増加し、その殆どは国外からの登録者です」とチェン氏。

サイトのパーソナライゼーションを通してユーザーのエンゲージメントの向上や、会員の有償化の収入の向上を目的として、シーセンスのテクノロジーを利用しています。その重要な手法にA/Bテストもあります。「編集者は、達成すべきKPIを持っています。もし、記事が目標を下回った場合には彼らは別の写真、違う文言に差し替えて、結果をリアルタイムに追跡します」とチェン氏は述べました。

シーセンスの創設者のジョン・M・ラービックはパブリッシャーによりよいマーケッターになるべきだと促しました。「また、マーケッターはよりよいパブリッシャーにならなくてはいけません」と付け加え、大手のパブリッシャーよりも多くのジャーナリストを雇っているブランドも出てきている事実を紹介しました。「コンテンツマーケティングと呼ぶか、なんと呼ぶかはお任せしますが、これが現実です」

これらの企業はオーディエンスの注目とロイヤリティーを獲得するため、出版業界でも、収益拡大のためにマーケティング戦略に取り組む必要が出てきています。

 

ピアノメディア CEO のケリー・リーチ氏は「Webパブリッシングの時代、紙媒体の限界がついに壊されました。今日、パブリッシャーはかつてないくらいスクリーン資産について考えているようです」と述べました。

「パブリッシャーは提供すべき正しいコンテンツを見つけるのに、非常に苦労しています。同様に、彼らはマーケッターとして市場に乗り込むことにも苦労しています」

いくつかの入念な検索の後、ピアノメディアの顧客である Týždeň サイトは、よりよいマーケッターになることによってそして、定期購読なのか、ドキュメントななのかのようにオーディエンスが本当に必要だと思っているものが何かを知る、「難しい問題」の解決策を見つけ出しました。

ペイウォールの内側にあるドキュメンタリーを宣伝する中で、かつてないくらい会員登録への関心が集まったことに気がつきました。そのため、彼らは顧客が求めているものを押し出し、成功を収めました。「彼らは実際に自作ドキュメンタリーのセクションを、サイトに追加することを決定しました。」とリーチ氏は述べました。

 

ランプ社 CEO のトム・ウィルデ氏は、「ビデオがオンライン上の主要なコンテンツとなりつつあることは、避けられない事実ですが、ビデオはウェブの大半を占めるテキストとは異なり、やや取り扱いが難しいのです。ビデオを検索エンジンやインデックスサービスの対象にするのは容易ではありません」と語ります。

彼は検索、記事の文脈、ユーザーの行動そしてトレンドのレコメンデーションを織り混ぜた、Video Discovery Matrix について説明しました。正しいテクノロジーを用いればビデオは突然格段に使いやすく、そしてアクセスし易くなります。

ランプ社は新しいビデオ機能の提供を開始しようとしています。ビデオコンテンツを分析し、パーソナライズし、そして究極にはマネタイズするため、シーセンスのテクノロジーを用います。それは、例えば個人の関心に応じて、あるいはやや古くてもユーザーとの関連性が非常に高いビデオを選ぶなど、ビデオコンテンツをプロモーションする際、より高いインテリジェンスを発揮することを意味しています。事例として、マーサ・スチュワート料理教室で、フムス(ひよこ豆のディップ)のレシピが隠れている番組内の正確な時間が、突如簡単に見つけられるようになりました。

 

2015年6月24日の GXDigitalより