パーソナライゼーションは出版業界を救えるか?

30 Nov 2016 | By CXENSE Japan

「パブリッシャー向けのパーソナライゼーションは、もはや特別なものでも、あったらいいな、というものではありません。オンラインパブリッシャーになるための前提条件のようなものです。それがなければ、ビジネスになりません。」
シーセンス CPO (Chief Product Officer) Tom Wilde

私たちが繰り返しお伝えしているのは、「コンテンツ・イズ・キング」ということです。オンラインパブリッシャーにとって良いニュースになるはずです。しかし、パブリッシャー業界の全てがバラ色になるわけではありません。パブシッシャービジネスは以前と違って困難な状況にあるのです。

ロイターのジャーナリズムに関する研究所は、パブリッシャーがどれだけ新しく、複数の課題に直面しているかを強調しました。これには、ニュース配信サイトからFacebook、YouTube、Twitterといったソーシャルメディアへすぐに遷移してしまうことや、デジタル広告に対してモバイルと消費者が転換期を迎えていることが含まれています。

ちょうど半数(51%)がソーシャルメディアをニュースの情報源として利用していると回答し、ソーシャルメディアを主要な情報源の1つにあげている人が1割いました(12%)。44%はFacebookを使って毎週ニュースを見つけたり、読んだり、閲覧したり、共有したり、コメントしています。

全体では、24歳未満の若者の約28%がソーシャルメディアを主要なニュース源としてみなしています。女性はニュースを見つけるためにソーシャルメディアを使用し、Webサイトやアプリへ直接来訪する可能性は非常に低くなります。

 

同時に、アドブロッカーの導入が増加しており、ポーランドでは38%もの割合を占めます。今のところモバイルで使っている人はほとんどいませんが、回答者の3分の1は来年にもアドブロッカーを導入する予定だと回答しています。最もニュースを閲覧する若年層のグループがそれに追随するでしょう。

言い換えれば、ターゲットとするオーディエンスの人口構造を考慮すると、これは単に今日現在の問題ではなく、コンテンツプロバイダーにとって頭の痛い問題になる可能性があるのです。

・パブリッシャーは持続可能なビジネスモデルを構築しなければなりません。

これらの要因は伝統的なパブリッシャーのビジネスモデルを覆すものです。有料コンテンツ型モデルへ移行させるのには消費者の不満が募り、オンラインパブリッシャーが問題を抱えるのは明らかです。

膨大な量のコンテンツが流通しているため、消費者は圧倒されています。そのうちの何百万人もの人々がニュース、機能、興味のあるアイテムを個人の好みに応じてフィルタリングされるオンラインスペースを心地よいとは感じていません。

・読者は満足するコンテンツを求めています。

究極のゴールは、時間をかけて作り上げられた個々人向けの完全パーソナライゼーションです。読者は興味をそそられる2〜3個のストーリーを見つけるために、関係ないコンテンツやページを辿ることは望んでいません。望んだものを見つけ出す前に、関係のない大量の広告が読み込まれることが少なくありません。

今、読者は満足させてくれるコンテンツを求めています。もし手に入らなければ、求めてるものを探し出すために、オンライン上の他のルートを辿るでしょう。

ロイターはこれを明確にしています。最大割合を占めるニュース消費者の36%が、過去の視聴習慣に基づいてニュースを自動的に選択しているのです。

・豊富なインサイトを備えてユーザーの嗜好を理解する。

これをやらない主な例はリオ五輪です。世界中の何百万人もの人々が熱狂した時間を過ごしたのは疑いようがありません。しかし実際には、十分なインサイトを得ることはできませんでした。というのも、リオは勝手が違うイベントでした。スポーツが嫌いな人、何百万人ものスポーツ嫌いの人は心底嫌がるからです。

この事実を利用している企業もありました。英国のテレビプロバイダ(スカイ)は2つの全く異なるパッケージをリオ用に利用しました。スポーツ愛好者向けのスポーツパッケージと、その他のエンターテインメントパッケージ(プレミアムフィルムサービスを含む)に関する特別な情報を準備しました。

これとは対照的に、BBCは自社サイトの来訪者に対してとにかくスポーツ情報だけをたくさん提供していました。

このアプローチの提供にしっかりとした統計はありませんが、逸話はたくさんあります。多くの人々が放映媒体から遠ざかりました。一般的に考えれば、人々がとある一つのメディアを遠ざけることがあれば、それはオンラインからも遠ざかる可能性があるということです。

ただし、これだけ言及すると不公平です。BBCはこのアプローチだけではありませんでした。リオのスポーツ三昧の1ヶ月も前に、BBCのコンテンツとユーザーにリコメンドを提供するアプリ、BBC+を立ち上げていました。BBCは明らかに、パーソナライゼーションメッセージを持っています。

さらに、彼らはNew York TimesやWall Street Journalのようなパーソナライズされたコンテンツを提供する技術をすでに持ち、キャッチアップしています。同じような企画をしているWashington Postに先行もしているのです。

・「コンテンツ・イズ・キング」は継続します。ただし、正しい文脈の場合です。

過去の事実は変化しています。「コンテンツ・イズ・キング」は継続しますが、それは関連性のある文脈の中に限ります。そうでなければ、消費者はコンテンツが乱雑に存在するだけの状況を、既に軽視していることが実証されたばかりです。パーソナライゼーションを適用するか、消滅させるかです。この場合は伝統的なパブリッシャーの消滅を意味します。

これ以外にも、収益化や既存のコンテンツの価値を最大化することにも影響します。なぜなら、読者が閲覧しなくなったら、収益化も最大化も不要になってしまうからです。

シーセンス CPO Tom Wilde